F1速報の1/22号を買いました。『ホンダの記憶 第三期F1活動の9年間』という特集記事に惹かれたので。
その9年間はリアルタイムに見てきましたが、こうして”走馬灯のように”俯瞰すると、改めて思うところがありますね。
自動車メーカーがF1に参戦するとして、方法は2通りあると思えます。
1. 自力で新しいチームを立ち上げる
2. 実績のあるチームとジョイント or 買収する
ホンダのF1活動は3期に分けられますが、1期は"1"で、2期は"2"でした。"2"は手堅い方法で、ホンダ2期の場合はウィリアムズ、ロータス、マクラーレンといった名門チームとジョイントし、特にマクラーレンとのパッケージは無敵でしたね。
ただし2期はエンジン供給だけであり、3期は車体開発もやりたいということで、当初は"1"でスタートしていました。ちゃんとマシンを作り上げ、合同テストに参加した初っ端からトップタイム連発という快挙を成し遂げ、僕らファンも大いに期待したものでしたが、
その合同テストのわずか数ヶ月後、なぜかホンダは自力での参戦を断念し、車体開発チームも解散させてしまいました。ホンダが選んだ手法はこれです。
3. 実績の無い新興チームとジョイントする
それはどうなん、と多くの人々が突っ込みを入れたし、僕もそう思いましたよ。 「車体開発にも参加したいから新興チームと組む」、と説明されましたが、買収ならともかくジョイントでコントロールできるんだろうかと。いいエンジンさえ作れば勝てるほど、F1は甘くないですし。 「チーム運営には興味が無い」とも言っていましたが、ならばちゃんと運営の実績があるチームを選ばないと。
危惧されたとおり、これがすべての失敗の始まりでした。成績が出ず、マネジメントや開発の責任者が更迭され、そのたびにスタッフが大幅に入れ替わり、ますます成績が出ない、という悪循環。7年目からは遅まきながらチームを買収して、ホンダが直接コントロールしようとしたけれど既に遅く、むしろそれを嫌気して開発キーマンが離脱する事態にもなりました。
会社でもチームでもそうだと思うんですけど、その集団の文化ってありますよね。強いチームには、一丸となって目的を達成するための文化があるものです。文化はトップのカラーで作られるところが大きいと思うのですが、3期ホンダのように、トップが次々と変わって、スタッフも激しく入れ替わるようだとカラーも定着しないわけで。結果として個人主義者の集まりとなり、自分のキャリアのためにしか動かず、むしろ仲間内で足を引っ張リ合うようになり、という最悪の”文化”が出来上がります。いろんなインタビュー記事などを総合すると、HRF1(Honda Racing F1)はまさにそんな感じだったようです。佐藤琢磨も、スーパーアグリに移って、「チームの雰囲気がHRF1よりずっと良い」と語っていました。多くのファンも、HRF1を解散させてスーパーアグリを買収したほうがいいんじゃないの?と言ってたものでした。
先日、ホンダはF1活動の休止を発表しましたが、これは経済危機だけが原因ではなく、HRF1をリセットすることにしたのだと僕は思っています。HRF1は文化からしてダメであり、捨てて作り直したほうが得策だと。最初の1歩を間違えてしまったことは取り返せないので。
「F1はホンダのDNA」と言いますが、これは単なる宣伝文句ではなく、本当にそうだと思うのです。自動車メーカーになった翌年からF1に参戦したという無茶っぷり。ホンダは市販車とF1の開発部門の垣根が低く、相互に異動できるので、「F1をやりたいからホンダに入った」という人が多いそうで、それこそが「F1はホンダのDNA」といわれる理由でしょう。
今現在は自動車メーカーには辛い時代で、淘汰も起こるでしょうけれど、ホンダやトヨタといったちゃんとしたクルマを作ってきたメーカーは生き残るし、むしろ前よりも強くなって復活するでしょう。そうしたらホンダは必ずF1に帰ってきて、次は最初の一歩を間違えないと信じています。
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