きそう-てんがい 【奇想天外】 (名・形動)
〔「奇想天外より落つ」の略〕考えが普通では思いもよらぬほど奇抜である・こと(さま)。
(goo辞書)
SFの楽しさのひとつは、「奇想天外なアイデア」に出会うことですが、グレッグ・イーガンの「順列都市」という作品は、まさにそれを満喫させてくれます。
物語は、ある人の脳神経を"スキャン"して、それをコンピュータ内にダウンロードされた"コピー人格"が、"意識のあるプログラム"として目覚めるところから始まります。
これ自体は、さほど珍しくないネタなのですが、イーガンはこの「意識がプログラムコードにすぎないとしたら、どんなことが起こるか」ということを徹底的に追求して、「こんなことが起こる」という様々なバリエーションを読者に示し、それをベースにして「塵理論」という、とんでもなく奇想天外なロジックを組み上げていきます。
正直「塵理論」は、怪しげなところも多々あるんですが、そのロジックをたたみかける迫力や、そのスケールの大きさに圧倒されて、強引に納得させられてしまうものがあるのでした。
「人間原理」に通じるものはあるなーと思っているのですが、あまり書くとネタバレになるのでこのへんで。
グレッグ・イーガンという人は、もとプログラマーだそうで、この本に出てくるコンピュータのディティールには説得力があります。たとえば"コピー人格"の生きるスピードは、使えるリソース相応であって、貧乏なコピーは金持ちのコピーよりも遅い速度(例えば実時間の1/60)で実行されるとか。
要はシミュレーションなんで、シミュレーション世界の神様クロックと同期していれば、実時間でなくてかまわないわけですね。
コンピュータ技術用語が説明なしにポンポン出てくるので、蛮人もとい万人にはお勧めしがたいのですが、ソフトウエアエンジニアならば楽しめるはず、と思います。ぜひ読んで、私と「塵理論」について語り合いましょうぜ。
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