ヱンヂニヤ・トヲルの生活と意見: 素晴らしき冒険野郎

コン・ティキ号探検記
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忙しくて、会社と自宅を往復するだけのような毎日が続くと、”どこでもいいから、遠くの知らない場所に行ってみたい”、という思いに捕らわれてしまいます。そういう時は、気晴らしに冒険記や旅行記などを読むのもいいようで。

ヘイエルダールは、そもそもは動物学者でしたが、あるとき、ポリネシア人の祖先はペルーから海を渡ってきたのではないか、という着想を得、長年の研究の結果、その説を発表しました。

しかし、本職の人類学者たちには無視されてしまいます。古代のペルーには、船どころかカヌーも無かったから、太平洋を4千キロ以上も渡るのは不可能だ、と思われていたからです。ヘイエルダールは、バルサの筏ならあったし、それで海流に乗れば行き着けるはずだ、と主張して、自分でやってみることにしました。

専門家の多くは反対しました。バルサは水を吸うので、浮力は1ヶ月も持たないだろう、とか、荒天に会えば、筏の縄は簡単に擦り切れてしまうだろう、とか。でもヘイエルダールは、古代のペルー人にできたのだから、同じやり方をすれば必ずできるはず、と信じて、そういう忠告には耳を貸しませんでした。なんとも無茶な話です。

無茶といえば、一緒に航海した5人の仲間も、これまた無茶な連中で。二次大戦のころの軍隊仲間だったり、一緒にディナーを取っただけの知らない人だったりするのですが、「筏でペルーからポリネシアまで航海することを計画している」という話を聞くと、細部も聞かずに「俺も行く！」と乗り組んじゃうんですね。仕事も家族もおっぽって。。あんたらおかしいよ！　ノルウェー人に流れるバイキングの血も、関係あるんでしょうか。

ヘイエルダールは文才もあるようで、準備段階はワクワクするし、航海中はむしろ少したるみますが、ラストに向けて盛り上がって、最後のシーンは非常に印象的です。詩的で美しいとさえ思いました。

南極点征服
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次の本は、アムンセンによる南極探検記です。アムンセン隊とスコット隊の、南極点先陣争いは有名な話ですが、もっぱらスコット隊の視点で語られるように思います。敗れた上、全員が遭難してしまったという、悲劇のヒーローだからでしょう。その文脈では、どちらかというとアムンセンは悪役です。

スコットの母国であるイギリス人にとっては特にそうで。アムンセンは犬ぞりを活用して成功したわけですが（犬は食料にもなった…）、アムンセンが南極点に到達したときのイギリスの新聞の見出しは、「犬、南極点に立つ」だったとか。

そんな、一部には評判の悪いアムンセンですが、この本を読むと、彼の人柄がよくわかります。大げさなことや、功を誇るようなことはほとんど書かず、ひたすら計画遂行の話と、仲間や協力者への感謝の言葉で埋められています。

今ならば、南極の地図もあれば、無線で支援機を呼ぶこともできるわけですが、そんなものは何も無く、先に何が待っているのかわからない土地に、犬ぞりに積めるだけの最低限の機材で挑んだ勇気はすごいものです。でもアムンセンは、成功を全く疑っていなかったし、実際のところ、緻密な準備のおかげで、結果的にはかなり順調にやってのけたのでした。

なにか新しいことをやろうとしたときに、それはうまく行かないだろう、というネガティブな理由は何十個でも思いつくわけです。でも、自分なりに「うまくいく」という確信があり、それに向けて緻密に計画して、大胆に実行した人が、偉業を成し遂げるということなんでしょうね。

ところでお気づきのように、2冊ともたまたまノルウェー人のお話ですね。しかも、コン・ティキ号と、アムンセンが乗り組んだフロム号は、オスロ近郊のご近所に展示してあるそうです。行きたいなぁノルウェー。